弾性ストッキングは効くのか?

かつて私が大きな病院の心臓血管外科医として働いていた時は、受診される下肢静脈瘤の患者様全てにまず、弾性ストッキングを購入・着用するよう勧めていました。手術治療の適応のあるなしにかかわらず全員に、です。

弾性ストッキングを履いている時間中は静脈の逆流はほとんど起こらないため、下肢静脈瘤の症状であるむくみやだるさ、こむら返りの改善にとても効果があるからです。
弾性ストッキングを勧めることは医学的にも正しいことですが、一方で、弾性ストッキングを脱ぐと症状が出てくることも分かっていました。弾性ストッキングはあくまで「対症療法」ですから、一生続けるわけにはいきません。手術適応の患者様に対しては本来は手術を勧めるべきです。

しかし大きな病院で働いているとどうしても大手術や緊急手術に追われてしまい、下肢静脈瘤の手術にまで手が回らないという事情もあり、「弾性ストッキングで様子をみましょう」と治療を先延ばしにせざるを得なかったのです。

弾性ストッキングとは?

弾性ストッキングは、静脈圧(静脈内の血液の圧力)の2~3倍以上の力で脚をしっかり締め上げるためのストッキングです。逆流が生じた血管も弾性ストッキングを履いている間はその力で潰されるので、逆流による足の症状は軽くなります。
ただし逆流そのものを治すことはできませんので、「対症療法」として、あるいは手術をするほどではない軽症の下肢静脈瘤の方に対して適応があります。

下肢静脈瘤の手術治療で逆流を完全に止めてしまえば、術後1ヶ月はこの弾性ストッキングを着用するように勧められていますが1ヶ月経てば基本的には弾性ストッキングを卒業することができます。
ただし、飛行機など長時間の移動や長時間の立ち仕事などの状況では、たとえ逆流が全く無くても脚がむくんだりだるくなったりしますので、なるべく弾性ストッキングを履く癖をつけておいた方が良いと思います。

うっ滞性皮膚炎による皮膚硬化症と皮膚潰瘍

下肢静脈瘤をほったらかしにしていると、膝下の皮膚に着色が起こったり皮膚がツルツルに硬い状態になったり、そこにできた傷が治らず潰瘍になったりするようになります。これをうっ滞性皮膚炎といい、下肢静脈瘤の所見・症状の中でも特に重いものです。

下肢静脈瘤の治療できっちりと逆流を止めたとしても、一度変色・硬化した皮膚性状は簡単には元に戻りません。当院では、こういった最重症の方に対しては術後1ヶ月で終診とせず、その後も1年程度にわたって皮膚性状をフォローしています。
また、術前に皮膚硬化症や皮膚潰瘍を認める方は術後もずっと弾性ストッキングを着用していただくようにしています。弾性ストッキングは皮膚硬化症・皮膚潰瘍に対しては「治療」としてのエビデンスが認められているからです。

つまり、皮膚硬化症・皮膚潰瘍は術後長い時間をかけて改善していくものですが、弾性ストッキングを履き続けることでより早い改善が期待できるのです。

記事制作者
院長

村田 将光