下肢静脈瘤に悩まれる方の多くが心配されていることだと思います。当院でも初診診察時に真っ先に聞かれることの多い内容です。
結論としては、下肢静脈瘤に血栓が出来ても、肺に飛ぶことは極めて稀です。頭に飛ぶことはありません(心房中隔欠損症など、生まれつき心疾患をお持ちの方を除く)。

■ 静脈血流が注ぐのは心臓そして肺です。

体内の大きな静脈にできた血栓がもし飛んでいくとしたら、その着地点は心臓を通過して肺になります。肺に血栓が詰まることを肺塞栓症(エコノミークラス症候群)といい、突然死を引き起こす疾患として有名ですね。

もちろん肺塞栓症は極めて重篤な疾患ですが、逆に言うと血栓は肺でトラップされるため(引っかかるということです)、血栓が脳まで届くことはありません。つまり、静脈内の血栓が脳塞栓(脳梗塞)をおこすことは無いのです。

■ 下肢静脈瘤の中にできた血栓が肺に飛ぶことが稀なのはどうしてでしょうか。

下肢静脈瘤の中に出来た血栓は静脈の壁にこびりついてしまうからだと考えられます。こびりついた血栓はいつまでたっても溶けずにその場に留まり、さきほど説明した血栓性静脈炎を引き起こすのです。
もちろん下肢静脈瘤の存在する部位によっては、血栓が静脈の壁から剥がれて肺塞栓症を引き起こす可能性があります。太ももの付け根にできた巨大な下肢静脈瘤の場合などがこれに当てはまるでしょう。

また、ふくらはぎの筋肉内にできた血栓も、肺塞栓を高率に引き起こすことが知られています。これは、ふくらはぎの筋肉内静脈は野球のグローブのような構造になっているため(盲端構造といいます)、大きな血栓ができやすく、静脈の壁から剥がれやすいのが原因です。

当院での超音波検査では、血管外科医としての多くの経験から、以上のような可能性を逐一チェックするように心がけています。

下肢静脈瘤の予防について

どのような人が下肢静脈瘤になりやすいか?

下肢静脈瘤を予防するためには、”どのような人が下肢静脈瘤になりやすいか”を知る必要があります。
下肢静脈瘤になりやすい人の特徴は、以下のようになります。

  • 立ち仕事をしている方
  • 仕事中座りっぱなしのことが多い方
  • よく正座をする方
  • 1年前よりベルトがきつい方
  • 現在妊娠中、あるいは出産歴がある方

共通するのは、いずれも「脚の血液の流れが滞ってしまう」危険性が高いということです。これが下肢静脈瘤のリスクを高めてしまいます。

立ち仕事をしている方でも、仕事中に歩いたり座ったりといった動作をよくされている方はまだ大丈夫です。
仕事中あまり動かずに立ちっぱなし、あるいは座りっぱなしというのが良くありません。脚の血液は、脚の筋肉が動くことで心臓に戻るからです(ふくらはぎは第2の心臓と言います)。

つまり、脚の筋肉が動かないと血液の流れは滞ってしまいます。

正座は膝を大きく曲げて座る動作です。正座中は膝の裏にある静脈が強く屈曲します。屈曲した血管内は血液が流れづらいので、結果として血液の流れが滞ってしまいます。

ベルトのサイズはお腹周りのサイズ(腹囲)ですね。腹囲が大きくなればなるほど、お腹の中の圧力が高くなります。脚の血液はお腹の中を通って心臓に返りますので、圧力が高まるほど血液が心臓に返りづらくなり、脚の血液の流れが滞ってしまう原因となります。これは妊婦さんや出産時の「いきみ」についても同様です。

記事制作者
院長

村田 将光